工場からの騒音がひどい時の対処法|騒音規制のルールと被害者による手続きを解説
「近くの工場の作業音がひどくて困っている」と感じても、何をすればいいのかわからない方がほとんどかと思います。
しかし騒音に関しては法律上の規制が適用されますので、程度によっては法的な対応をとることが可能です。騒音に困っている方はぜひ当記事をご一読いただき、次の一手の参考にしていただければと思います。
工場の騒音は法律で規制されている
工場から出る騒音のうち、一定の地域内にある特定の工場・事業場については、「騒音規制法」によって規制対象とされています。
この法律は生活環境を守り国民の健康を守ることを目的として定められており、工場や事業場において、特定の機械設備を使用することに伴って発生する騒音に規制が適用されます。
※騒音規制法が対象とするのは、特定の機械設備(金属加工機械や空気圧縮機などの「特定施設」)を設置する工場や事業場(特定工場等)。ただしこれに該当しない工場でも、各都道府県・市区町村の条例により規制される場合や、環境基本法に基づく騒音の環境基準が行政上の指標として用いられる場合がある。
なお、規制基準は地域と時間帯によって異なります。
たとえば住宅地だと昼間の基準値が50〜55デシベル程度と定められている自治体が多く、工業地域に近い区域ほど基準が緩やかになります。
「受忍限度」とは何か
法律や条例の基準を超えているかどうかと別に、民事上の問題を考えるうえで重要になる概念が「受忍限度」です。
受忍限度とは、社会共同生活を送るうえで一般的に我慢すべき限界のことです。騒音の被害が民法上の不法行為として認められるかどうかは、この受忍限度を超えているかどうかで判断されるのです。
過去の裁判例でも、工場の操業に伴う騒音が受忍限度を超えるかどうかは、騒音の種類・大きさ・継続性、発生時間帯、周辺の状況など複数の要素を総合的に判断するとされています。
規制基準の数値を若干超えているだけで自動的に受忍限度を超えると判断されるわけではありません。
逆に基準値以下であっても、状況によっては受忍限度を超えると判断される可能性があるといえるでしょう。
騒音被害への初動対応で大事なこと
騒音被害に対して本格的に対処していく際欠かせないのが、客観的な記録です。
記録として残しておくべき情報は次のとおりです。
- 騒音が発生する日時・時間帯・頻度
例:カレンダーや日記形式でメモするなど。 - 音の大きさの目安
例:スマホの騒音計アプリで測定・記録するなど。 - どのような作業や機械から発生しているか(わかる範囲で)
- 頭痛や睡眠障害など体調への影響があれば医療機関の記録
スマホアプリで測定する数値は精度に限界があるため、訴訟なども想定して備えたいときは専門業者による騒音測定を依頼することも有効です。
行政窓口への相談も検討
市区町村の窓口(環境担当の部署や公害に関する相談窓口など)に相談するのも有効です。自治体は騒音規制法に基づき、規制基準に違反している工場に対して改善勧告や改善命令を出す権限を持っています。
相談の際に確認されることとしては、騒音の種類と発生状況、発生源の名称と所在地、これまでの経緯、相談者の連絡先などが挙げられます。答えられるよう備えておくとスムーズに進むでしょう。
ただし、行政による指導にも限界があります。自治体が行えるのは発生源への行政指導や命令であり、民事上の損害賠償問題には介入できません。工場との直接の金銭的解決や被害補償を求めるには、別途対応が必要になります。
民事上の請求は弁護士に相談
行政指導でも改善がなく被害が続く場合、あるいは健康被害や経済的損害を受けている場合は、民事上の法的対応も視野に入れて動きましょう。
騒音問題に対する主な法的措置 | |
|---|---|
①差止請求 | ・騒音の発生そのものをやめさせるための手続き ・裁判所に申し立てることで、工場の操業を制限または停止するよう命じてもらう ・差止めが認められるには、被害が受忍限度を超えていることの立証が必要 |
②損害賠償請求 | ・騒音によって被った精神的苦痛(慰謝料)や、治療費・転居費用などの実損害に対して賠償を求める手続き ・賠償額は個別の事情によって異なり、騒音の程度や継続期間、被害内容のほか、工場側が行政指導に従わなかった事実なども考慮されることがある |
なお、民事上の請求を行う手段は「訴訟の提起」だけではありません。
工場を運営する事業者に直接私的に請求することも可能ですし、これが難しい場合でも、訴訟の前に「公害紛争処理制度」「民事調停」「認証ADR」といった仕組みも検討する価値があります。
※公害紛争処理制度:国の公害等調整委員会や都道府県の審査会が間に入り、調停・あっせん・裁定で解決を図る仕組みのこと。
※民事調停:簡易裁判所で調停委員を交えて話し合う手続き
※認証ADR:法務大臣が認証した裁判外紛争解決機関を通じた解決方法
これらの手法で解決できれば、訴訟と比べて費用や時間の負担を抑えることができます。どの方法がご自身の状況に合っているかは、被害の程度や工場側の対応状況によって変わるため、弁護士にご相談いただき一緒に検討していくことをおすすめします。
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谷 次郎Jiro Tani
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