不作為の違法確認の訴え|訴訟のポイントや注意点を紹介
役所で申請を行ったにもかかわらず何の応答もない、こうした対応に困ったときの選択肢の1つが「不作為の違法確認の訴え」です。不作為であることが違法と主張し、その後対応してもらうために利用する手続きです。ここではこの訴訟を検討するときに押さえておきたいポイントや注意点を紹介しています。
「不作為の違法確認の訴え」とは
行政に対する訴訟はいくつかの類型に分けられており、公権力の行使に関わる不服を申し立てるための訴訟は「抗告訴訟」と呼ばれます。抗告訴訟にはさらに6つの種類があり、もっとも代表的でよく利用されるのが「取消訴訟」と呼ばれる訴訟です。これは行政庁による営業停止命令などの処分について取り消しを求めるために提起するものです。
一方で、行政庁に一定の行為を求めたにもかかわらず何ら反応してくれないというケースに利用できる「不作為の違法確認の訴え」という訴訟も法律上用意されています。不作為とは「作為がない」ということ、つまり「何もしてくれない」ことを意味します。
具体的には「申請をしたのにいつまでも処分が下されず、反応をしてくれない」といった場面でこの訴えを提起することになります。
訴えを提起する際のポイント
不作為の違法確認の訴えを提起する際に押さえておくべきポイントは次のとおりです。
訴訟要件の確認
まずは訴訟要件を確認する必要があります。
誰でも自由に提起できるものではなく、この訴訟類型は「申請をした者」に限り提起が認められます。
そしてここでいう「申請」とは、許可や認可などの処分・裁決を求める行為を指し、訴訟要件を満たす上で申請自体の適法性は問われません。仮に申請が不適法なものであっても、行政庁が何も応答していないのであれば訴えを起こすことが可能です。
一方で、申請に対する応答(却下や不許可処分など)がすでに行われている場合は、訴えの利益は失われ、訴えを提起しても審理さえ行ってくれません。
出訴期間の定めはない
行政に対する訴訟類型の多くには「出訴期間」が法定されています。私人間の争いとは異なり社会的な側面も持つため、一定の期限を設けて法的安定性を保つよう仕組みが作られているのです。
しかし不作為に対する訴えに関しては、不作為が続く限りいつでも提起できます。つまり期間の制限が設けられていません。
なお、状況が変化して取消訴訟など別の訴訟類型が必要となるケースもありますが、その際別途出訴期間が問題となることもあるため、注意が必要です。
「相当の期間」経過の有無
この訴えは、不作為が違法であることを公的に認めてもらうための手続きです。そのためその状態違法と評価できるほどの期間が経過していなければなりません。
内容にもよりますが申請後はその内容を審査する時間が通常必要ですので、即座に結果が出ないからといって違法とはなりません。「相当の期間」が経過してから訴えを起こすべきです。
そこで「相当の期間とはどれほどか」を考える必要があるのですが、これは事案ごとに合理的に判断されるもので、行政法が定める「標準処理期間(申請を受けてから、処分を決定するまでに通常要する標準的な期間)」が1つの目安となります。
※標準処理期間を過ぎても必ず違法とされるわけではない。特別な調査や審査が必要な場合など、個別の事情によっては当該期間を超えても違法とならない場合がある。逆に、当該期間を大幅に超えていることに正当な理由がないなら、違法と判断される可能性が高まる。
手続きの注意点
不作為の違法確認の訴えは不作為の状態を是正するための有効な手段ですが、次の注意点を踏まえて利用するようにしましょう。
判決で得られる効果
不作為が違法であると認められると、行政庁は当該事案に関する何らかの応答を行う義務を負います。
しかしながら、この訴訟で勝訴しても特定の処分内容を義務付けられるわけではありません。つまり、勝訴した結果、原告にとって不利益な処分や裁決が下される可能性もあるということです。
そもそもこの訴訟類型は違法な不作為を是正するためのものであって、特定の処分をしないよう求めるものでも、特定の処分をするよう求めるものでもありません。
そこで申請内容どおりの処分を直接求めたいのであれば、「義務付け訴訟」を併せて提起する必要があります。義務付け訴訟はその名のとおり特定の処分を行うよう義務を課すための訴訟であり、これに勝訴すれば申請した内容通りの結果を得ることができます。
ほかの手段も検討
不作為への対抗手段はこの訴訟類型以外にもあります。
たとえば行政不服審査法に基づく「審査請求」という手続きです。行政庁のした処分に対する不服だけでなく、不作為に対する不服にも利用することができ、処分を行った行政庁以外から審査を受けることができます。
ただ、訴訟とは異なり裁判所で審理を行うわけではありません。処分を直接行った行政庁ではなく別の機関が審理を行いますが、あくまで行政内部の処理ですので訴訟に比べると少し公平性に欠けるかもしれません。
それでも、訴訟のように大変な準備や長い期間、費用も必要としませんし、短期的に問題が解決する場合もあるため、利用者にとって利点が大きいといえるでしょう。
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