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官舎の建て替え反対に住民訴訟は起こせる?近隣住民の対抗手段について

近隣に官舎(公務員宿舎)があり、「建て替えの計画が発表されて困っている」という場合に取り得る手段にはいくつか種類があります。

近隣住民として住民訴訟というものを提起できないか、その他法的な措置はとれないか、当記事では官舎という特殊な施設の性質を踏まえ建て替えへの対抗手段について解説していきます。

官舎とはどういう建物か

官舎とは「国や地方公共団体が、公務員を居住させるために設置した住居」のことです。その中でも国家公務員のためのものは「国家公務員宿舎」と呼ばれ、国家公務員宿舎法に基づいて設置されています。

 

官舎の設置目的は、「国家公務員等の職務の能率的な遂行を確保し、国等の事務及び事業の円滑な運営に資すること」とされており、職員の福利厚生とは区別されています。つまり官舎は、仕事のために居住を確保する業務上の施設という位置づけです。

官舎の建て替えに反対する権利は住民にある?

近隣住民が官舎の建て替えに反対したいと思う理由はさまざまあるでしょう。日照や景観の悪化、騒音、駐車スペースの問題など多く考えられます。

 

しかし建て替えを止めようとするのであれば、単に弊害が生じるからというだけではなく、「反対する法的権利があるか」を考えなくてはなりません。

 

官舎の建て替えは、国有財産(または公有財産)の維持・管理や活用の一環として行われるものであり、基本的には行政の裁量に委ねられています。近隣住民が「建て替えそのものを止める権利」を当然に持つわけではありません。

 

ただし、建て替えによる日照や通風の侵害が受忍限度を超えるケース、建築基準法の日影規制・斜線制限への違反があるケース、建築確認など関連する行政処分の手続きや内容に違法があるケースなどでは、法的な措置をとる余地が生じます。

日照権・日影規制をめぐる民事上の請求

日照や通風への影響を理由とするなら、民事上の不法行為に基づく損害賠償請求や工事差止め請求という手段を検討する価値があるでしょう。

 

居宅の日照や通風は快適で健康な生活に必要な生活利益であり、法的保護の対象となり得ると考えられているためです。

 

しかしながら、日照が遮られるだけで直ちに違法となるわけではなく、社会生活上の受忍限度を超えているかどうかがポイントとなります。

住民訴訟という訴訟の種類について

住民訴訟は「住民が行政に対して起こせる訴訟」ともいえそうですが、住民というだけで提起できるものではありませんし、そもそもこれは「地方公共団体(都道府県や市区町村)の違法な財務会計行為に対し、住民が是正を求める訴訟」のことです。

 

住民と行政間の訴訟を総称する用語ではありません。地方公共団体が相手方となること、そして財務に関する問題を解決するための手段であるという特徴を持ちます。

 

以下の要件を満たさなければ住民訴訟を提起することはできません。

 

  • 訴訟の提起前に住民監査請求を行うこと
  • 以下2点を満たす者が提起すること
    • 当該地方公共団体の住民
    • 住民監査請求を行った者
  • 地方公共団体の長または職員による、財務会計上の違法行為や怠った事実、が争いの対象であること
    公金の支出、財産の取得・管理・処分、契約の締結・履行などの行為

 

行政に止めてほしいこと全般を、住民訴訟として対処できるわけではありません。そして「住民監査請求」という前提条件も満たさなくてはなりません。

 

※住民監査請求とは

住民監査請求は、地方自治体に設置されている監査委員に対し、違法または不当な財務会計行為の是正を申し立てる手続き。訴訟として裁判所が厳格な審理を行う前に、行政内部でいったん不適切な対応がなかったか調査するフェーズとして設けられている。

官舎の建て替えに住民訴訟は使えるか

結論から言うと、官舎の建て替えの主体が国(国家公務員宿舎)である場合、住民訴訟は使えません。前述のとおり、住民訴訟は地方公共団体を相手方とする訴訟類型であって、国が主体となる国家公務員宿舎の建て替えについては対象外です。

 

一方、建て替えの主体が地方公共団体であり、その公務員宿舎の建て替えに当該団体の公金が支出されている場合には、その支出行為が財務会計上の違法行為に当たると評価できるなら住民訴訟の対象となり得ます。

 

しかし違法性の主張は簡単ではありません。単に「高い建物が建って困る」「景観が変わる」という理由だけでは不十分で、「適正な手続きを踏んでいない」「不当に高額の契約が結ばれた」「裁量権の濫用がある」など、具体的な財務上の違法を指摘しなくてはなりません。

その他の対抗手段

住民訴訟にこだわらず、いくつかほかの手段も視野に最適な方法を判断するべきです。そこで以下の措置も検討しましょう。

 

  • 建築確認の取消訴訟
    ・・・「建築確認」という行政処分を取り消すことで建て替えを止める方法。
  • 民事上の差止請求
    ・・・日照や通風の侵害が受忍限度を超えることを理由に、工事の差止めや損害賠償の請求を行う方法。
  • 住民説明会・行政への申し入れ
    ・・・法的手段の前段として、自治体や国の担当機関へ意見提出を行う方法。

 

どれが最適かは、官舎の管理主体や建て替えの内容、周辺への影響度合いによっても異なります。法的手段を検討する場合は、建築紛争や行政訴訟を扱う弁護士への早期相談をおすすめします。

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谷 次郎

谷 次郎Jiro Tani

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