取消訴訟と審査請求の違い~両制度の比較とそれぞれに適した利用シーンについて~
行政による処分に納得できないとき、国民はその処分について争うことができます。処分に対する不服を主張する手段には大きく「取消訴訟」と「審査請求」の2つがありますので、場面に応じて手段を使い分けなくてはなりません。
それぞれにどのような違いがあり、使いどころはどう異なるのか、当記事では各制度の大枠についてご紹介します。
取消訴訟と審査請求の違い
取消訴訟とは、「行政庁が行った処分の違法性を理由として、裁判所にその処分の取り消しを求める訴訟手続き」のことです。
同制度は行政事件訴訟法に規定されており、裁判所という、行政機関とは独立した第三者機関に処分についての判断をしてもらいます。
一方の審査請求は、「行政機関内部において処分の妥当性を検討してもらう手続き」のことです。
審査主体が異なる
両制度の決定的な違いは「審査主体」にあります。
取消訴訟では司法機関である裁判所が判断するのに対し、審査請求では行政機関が自らの処分を見直すことになります。
そのため公正さの観点では取消訴訟の方が安心といえますが、審査請求にも手続きが簡便であることや低コストであることなどのメリットがあります。
期間の制限が異なる
両制度には「手続きを利用できる期間」にも差があります。
取消訴訟の場合、「処分があったことを知った日から6ヶ月以内」または「処分があった日から1年以内」のいずれか早い方までに裁判所で手続きを始めなくてはなりません。
これに対し審査請求の場合、「処分または裁決があったことを知った日の翌日から3ヶ月以内」または「処分または裁決があった日の翌日から1年以内」という比較的短い期間内の手続きが求められます。
※書面を郵送する場合、消印日が有効な提出日となり、実際に行政機関に到達した日であることまでは求められない。
ただし、どちらの制度でも災害など特別の事情があり例外的に所定の期間が経過してからでも手続きを開始できるケースはあります。
各制度に適しているシーンとは
取消訴訟と審査請求のどちらを選択すべきかは個別の事情によって変わりますが、一般的な傾向として以下のような使い分けが考えられます。
- 審査請求が適している場面
- 費用を抑えて早く解決したい・・・審査請求であればあまり費用をかけず、比較的短期間で結論が得られる傾向にある。
- 処分に関する誤りが明らか・・・複雑な事案ではなく、再確認によって誤りをすぐに認めてもらえる見込みがある場合など。
- 取消訴訟が適している場面
- 処分の違法性が重大で行政機関による自主的な見直しも期待できない・・・処分の根拠法令の解釈に重大な誤りがある場合や、憲法上の権利侵害が問題となるような場面。
- 損害賠償を併せて請求する・・・処分の取り消しだけでなく、その処分によって生じた損害の賠償も求めたいときは、取消訴訟と国家賠償請求訴訟を併合提起する。
ただし、「審査請求前置主義」が適用される場面では訴訟を提起する前に審査請求を行わなければなりません。
たとえば税務関係だと、多くの場合まず行政機関に対して請求を行い、その裁決を得てから取消訴訟の提起を考える必要があります。ほかにも一定の分野では審査請求前置主義が採用されていますので注意してください。
不服申立ての方針の決め方
処分を受けた際には、当該処分が審査請求前置主義の対象かどうかをまず確認しましょう。処分の通知書には通常、不服申立ての方法が記載されているため、これを参考にチェックします。
前置主義が適用されない場合は、求める救済の内容や、ご自身が許容できる時間や費用、緊急性などを総合的に勘案して決断しましょう。
なお、両制度は排他的なものではありませんので、「審査請求で望む結果が得られなかった場合に取消訴訟を提起する」という戦略をとることも可能です。
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谷 次郎Jiro Tani
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