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国家賠償請求訴訟と一般民事との違い

国を相手に賠償責任を追及する訴訟と一般個人を相手に賠償責任を追及する訴訟は、どちらも他人に賠償金を支払ってもらうための手続きで共通点もあります。

しかし、前者の国家賠償請求訴訟、後者の一般民事における訴訟では請求の根拠となる法令が異なるなど多くの違いがあるのも確かです。具体的にどのような違いがあるのか、当記事ではこの2つの訴訟に着目して紹介していきます。

国家賠償請求訴訟も民事訴訟の一種

国家賠償とは、公務員が違法な行為を行うなどして私人に損失を与えてしまった場合に、国・地方公共団体が賠償を行うことをいいます。この国家賠償責任を追及するための訴訟も民事訴訟の一種ですので、大きな枠組みで見ると一般民事における訴訟と同じ、といえるでしょう。

 

責任追及の結果についても、国家賠償では「国から損害分に相当する賠償金を受け取ること」、一般民事では「トラブルのあった相手方から直接損害分に相当する賠償金を受け取ること」と共通しています。

一般民事との違い

私人間のトラブルを法的に解決するための枠組みをまとめて一般民事と呼ぶことができます。このときの訴訟だと原告および被告は私人であり、対等な立場で裁判手続きに臨みます。双方が証拠を提出。主張・立証を行いながら争点を整理して、裁判所が判決を下す流れとなります。

 

同じ民事訴訟ですし国家賠償請求訴訟との共通点もありますが、いくつか仕組み上の違い、事実上の違いもあります。その相違点をピックアップします。

法的根拠が違う

一般民事の訴訟だと、損害賠償請求は主に不法行為責任や使用者責任など民法の規定を根拠に行われます。

 

一方、国家賠償請求訴訟は国家賠償法に基づいて責任追及が行われます。

 

民法は一般法として多くのシチュエーションで適用される法律ですが、特定の状況下では別の法律による規定が優先的に適用されることもあるのです。国家賠償法もその1つで、国に対して賠償責任を追及する場面ではこちらの法律で定められたルールに沿って請求を行います。

責任を追及する対象が違う

一般の民事訴訟では、損害を与えた本人が直接責任を負うのが原則です。
また、使用者責任を追及できるとき、たとえばある会社の従業員が業務中に損害を与えてしまったときは、従業員個人に加え会社に対しても賠償責任を追及できることがあります。行為者本人と使用者である会社双方が責任を負うことになり、被害者はどちらに対しても請求が可能です。

 

これに対して国家賠償責任については国または地方公共団体が負いますので、賠償請求を公務員個人に対して行うことはできません。行為者本人との連帯責任でもなく、一方にしか請求ができません。

 

なお、その後国または地方公共団体が行為者に対して求償(支払った賠償金の一部を支払うよう請求すること)を行うことがあります。使用者責任により賠償金を支払った会社が従業員に求償できるケースもあるため、この点に関しては共通しています。

請求の原因となる行為が違う

一般民事で争いのもととなるのは、私人間の契約違反や不法行為などが主です。契約上の義務を履行しない(債務不履行)、故意または過失による交通事故などが請求の原因となります。

 

一方で国家賠償請求は、公権力の行使に関わる違法行為、公の施設の設置や管理上の瑕疵を請求の原因とします。

難易度や求められる専門性の高さが違う

国家賠償請求訴訟も基本的には民事訴訟手続きに準じて行われますが、原告側にとっての難易度や求められる専門性の高さなど、事実上の差異もあります。

 

当然、「一般民事だから手続きが簡単」「弁護士がいれば確実に勝てる」ということではありません。しかし一般民事における請求先とは、相手方が持つ法的な知識や経験に大きな違いがあります。取り扱う証拠、原告側が主張すべき内容なども変わってきます。

 

また、法的根拠を踏まえ適法性について留意しつつ公務にあたることになりますし、行為の背景、法令遵守に対する向き合い方も一般個人とは異なります。あくまで傾向ではありますが、請求を成功させるにはより高度な対応が必要になってくるでしょう。

国家賠償請求と一般民事の例

国家賠償請求訴訟の対象となるケースとして、次の例が挙げられます。

 

《 国家賠償請求訴訟の例 》

 

  • 誤認逮捕
    ・・・捜査機関による不適切な捜査、逮捕によって無実の者が拘束され精神的・経済的損害を被った場合。
  • 公害問題
    ・・・国が権限を適切に行使しなかった結果、公害が工場など生じ、近隣住民が健康被害を受けた場合。
  • 予防接種禍
    ・・・国が主導した予防接種に衛生管理上の不備があり、その結果健康被害が発生した場合。
  • 公共施設の瑕疵
    ・・・道路や橋など公共施設の設置・管理に欠陥があり、それにより事故や損害が発生した場合。

 

一方、一般民事だと次のような例が挙げられます。

 

《 一般民事の例 》

 

  • 交通事故
    ・・・運転者の不注意で通行人が負傷し、治療費や慰謝料を請求する場合。
  • 貸金返還請求
    ・・・貸したお金を返してもらう場合。
  • 離婚問題
    ・・・配偶者との離婚、それに伴う財産分与や養育費、慰謝料の請求などを争う場合。
  • 相続問題
    ・・・遺産の取得に関して親族間で争う場合。
  • 労働問題
    ・・・残業代の未払い、不当解雇などについて勤め先と争う場合。
  • 契約違反
    ・・・賃貸借契約や売買契約などの契約で定めた義務を正しく履行しなかったため損害が発生し、その損害分について賠償請求を行う場合。

 

このように、国家賠償請求訴訟は公権力や公共施設に関連する問題であり、解決には行政法や憲法などの知識も必要になってきます。一方、一般民事訴訟では日常生活で起こる多種多様なトラブルを対象としており、より身近な法律問題を扱うのが特徴です。

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谷 次郎

谷 次郎Jiro Tani

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2012年 弁護士登録

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