日照権とは?~日照権が認められる判断基準~
日照権とは、建物(住宅、マンションなど)の日当たりを確保する権利をいいます。日照権は例えば、日当たりの良好な自宅や自分のマンションの隣に高層マンションが建設され、本来入ってくるはずの太陽光が入ってこなくなるケースで問題となります。
日照権そのものは法律や条文に明記されているわけではありませんが、建築基準法には「斜線制限」と「日影規制」があります。
また多くの裁判例で日照権を認めており、日照権侵害を理由に損害賠償請求や建物自体の差止め請求ができる場合があります。
「斜線制限」は建物を建設できる空間の範囲を制限して、道路や隣地の日照、採光、通風を確保するための規制で、「道路斜線制限」、「隣地斜線制限」、「北側斜線制限」の3つがあります。特に重要なのが「北側斜線制限」で、北側隣地の日照、採光、通風を確保します。
一方、「日影規制」は中高層程度の建物を建設する際、隣接する地域に日影を一定時間以上生じさせないようにするための制限です。
日照権を確保するための規制として上記のものがありますが、たとえ建築基準法上の規制を遵守していたとしても日照権侵害と判断されるケースがあります。そのため、建築基準法上の制限は日照権侵害を判断する基準そのものではなく、日照権侵害を判断する要素の一つと考えられています(実際には、建築基準法に適合している場合は日照権侵害と判断されることは極端に少なくなります)。
裁判例における日照権侵害の判断基準として「受忍限度」基準があります。これは、建物に少しでも日影ができたら日照権侵害と判断するのではなく、高層建築物の建設により日当たりや採光の障害が社会生活上一般的に忍容するのを相当とする程度を越えた場合に日照権侵害があるとする判断基準です(最判昭和47年6月27日民集26巻5号1067頁参照)。
「受忍限度」を超えたかどうかの考慮要素としては、次のものがあります。
・建築基準法違反の有無
・地域性(住居地域の方が商業地域よりも日当たりを確保する重要性が高い)
・日照侵害の程度(一定期間の日影時間などを考慮)
・日照侵害を回避出来る可能性
・事前の十分な説明の有無、交渉経緯
・建設される建物の用途
日照権侵害が認められると、前述の通り、建物の建設差止めや損害賠償請求が行えますが、建設差止めは特に違法性が高い場合に認められる傾向が強く、ほとんど認められないといえるでしょう。
裁判例でも、日照権侵害が認められたケースでは、差止め請求を棄却し、損害賠償請求を認容する判決が多くなっています。
日照権トラブルは建築物や関係法令などに関する専門的な知識が必要となるため、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
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